税理士だけでなく、相続関連に一定の知識がある人にとっては借金で不動産購入というのは定番の相続対策だと思います。
多くの場合、実際の購入金額よりも相続税評価額が低くなります。一方で借金は残高分だけ債務控除されますから、その分だけ節税効果がある訳です。
この定番手法ですが、今後は扱いに注意しなくてはいけないかもしれません。
(今回は一定の知識がある方向けの記事になってしまいます)
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伝家の宝刀、通達6
相続税法では相続で取得する財産の評価はその時の時価と規定されていますが、時価ってなんやねん!となるので、評価方法を財産評価基本通達で定めています。土地でいえば路線価とかですね。
ただし、通達で評価することが著しく不適当と認められれば国税庁長官の指示に基づいて評価されることになります(これが通達6です)。
著しく不適当と言われても・・・という感じですが、この通達6の適用基準が変化して来ている感じがします。
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やり過ぎはアウト!
首都圏を中心に地価が上がっていることも影響してか、通達6の適用にあたって踏み込んだ判断がされました。(札幌不服審判所29年5月23日裁決)
概要としては、札幌の経営者が多額の借金をして首都圏に不動産を購入し、それを孫(養子)が相続しました。
この借金がミソでして、R銀行(ほぼ分かるやん・・・)の稟議書には「相続対策で実施する」と書かれており、相続税を減らす為のスキームだと認定されています。
この辺りも事実認定として認められ心証を悪くされた上に
「相続税の負担を免れる目的以外にほかの合理的な目的が併存していたとしても、・・・実質的な租税負担の公平を著しく害することに変わりはなく」
と、ぶった斬られ通達6での評価が適当だと結論付けらています。
ポイントは相続税負担の減少以外の目的があったとしてもダメだ、と言い切った点ではないかと。
財産評価基本通達に沿って評価したから絶対に大丈夫、ということは決してないということは頭に入れておくべきでしょう。
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首都圏以外では(多分)セーフ
今回のケースは相続税評価額が時価(不動産鑑定評価)の25%程度になっていたとのことで、かなり極端な差が出ていました。
首都圏ではこのようなこともあるようですが、それ以外の地域ではここまで極端に評価に開きが出ることは稀でしょう。
そういう意味では、常識的な範囲であれば伝家の宝刀を使われることはないんじゃないかと思っています。